会議のやり方

大掛かりな会議ばかりではなく、小さな会議にもあてはまる原則があります。この原則をわきまえなかったために、混乱したり分裂してしまった組織は少なくありません。


1.意見が違うことに意義がある

会議の目的は、互いに補い合うことにあります。みんなが同じ意見であれば他の意見から何も学ぶことはできません。良いことと悪いことの選択は難しくありません。難しいのは良いことと、良いことの選択です。そして会議で審議する事柄は、すべてがそうであり、だからこそ混乱しやすいのです。どちらも正しい意見であるのですから、私だけが正しいと思ってしまうのです。

古代社会は利害と意見の食い違いを暴力によって決着をつけましたが、近代社会は話し合いという方法で食い違いを調整しようという知恵を得ました。しかし話し合いで解決しなかった場合、最終的には戦争という暴力によって決着をつけることもあるのです。それゆえ話し合いの仕方を学ばなければなりません。そうでなければ、腕力や武器によるのではないかも知れませんが、別の種類の暴力で決着をつけるようになってしまいます。組織が分裂するとか、個人的には組織を去るとか。


2.会議前の心構え

意見をもって会議にのぞまなければなりませんが、それは意見であることを忘れてはなりません。会議の目的は多くの人の知恵によって最良の結論を導き出すことです。したがって意見は変わりうるものでなければなりません。他の人のより良い意見によって自分の意見を修正したり、ときには自分の意見を撤回する心の準備がなければなりません。意見が結果的に変わらなかったということはあるでしょう。しかし最初から「自分の意見は絶対に変えないぞ」という堅い決心で会議に出席する者は、会議に出席する準備がまだできていないと考えるべきです。それならば、会議をするよりアンケート調査をするべきであるのです。


3.会議中の心構え

意見は率直に述べるべきです。しかし礼儀正しくそうしなければなりません。礼儀正しくとは、控えめに意見を述べることではありません。丁寧なことばを用いるというだけでもありません。議題に関する自分の意見を述べるのであって、出席者の人格に関する自分の意見を述べるのではありません。だれかの意見に対して、「そんな幼稚な」「そんなバカな」「何にも分かってない」というような表現を用いてはならないのです。どこが間違っているのか、何が足りないのか、どうすればよいのかだけを述べればよいのです。

議長は丸くおさめることを最終目標としてはなりません。満場一致になるまで議論をするなら、いくら時間があっても足りません。もし一人の反対のために採決を延ばしたり議題を取り下げてしまうなら、9票の賛成より1票の反対の方が重いという不正な量りを用いたことになります。もちろん何でも多数決でじゃんじゃん決めていく乱暴なやり方をお勧めしているのではありません。まだまだ新しい意見が出る状態なら、継続審議にするなど、議題の性格に応じて臨機応変に対応すべきであることは言うまでもありません。


4.会議後の心構え

意見は会議が終わってから述べるのではありません。PTAの本当の会議は、「帰りの下駄箱での『ねっ』という言葉から始まる」と言われます。意見があれば会議中に言うべきであり、会議中に言わないという選択をした意見はもう語ってはなりません。決議されたことには従わなければなりません。自分の気持ちまで変える必要はありませんが、決議されたことに反対する行動をとったり、反対の意見を述べ続けてはなりません。